日の出


一年で一番昼が短い日、 冬至がやってきた。
「 この日から毎日 お米一粒分づつ昼間が長くなるのよ 」
と母が言っていたのを思い出す。

今日がどん底!
明日からは、日の出がすこ~しずつ早くなり
日の入りがすこ~しずつ遅くなる

そんな事を考えていると
なんだかワクワクしてくる。

寒さは厳しくなってくるけれど、
今まで真っ暗だった時間帯にお日様が昇る。
これだけで、朝起きるのもちょっとは楽になる。

日の出からはたくさんの元気をもらった。

以前、富士山に登った時の話、
夜中歩いて頂上でご来光を!
という計画で登り始めた。
9合目ぐらいまでくると
空気も薄く、意識はもうろう…

夏だというのに山の上は強い風が吹きつけてくる。
めちゃめちゃ寒い~!
寒さ避けの新聞紙を体に巻き付けても
歯の根が合わない。

体力も精神力も限界。
「 もーー1歩も進めない。」
地べたにへたり込む。

その時、東の空から白々と夜が明けて来た。

すると、一歩も歩けなかった
疲れきった足も
すっかりへこたれた心も
少しずつ回復していくではないか
力が湧いてきた。
私はウルトラマンか!と思うほど、
パワーは回復し、頂上まで行く事が出来た。

冬至も過ぎて
今年もいよいよ胸突き八丁に突入!
へこたれている体も心もきっとまた回復するさ
と信じて、年末を乗り切ろう。

初日の出を楽しみにして…

ひとやすみ


我が家には おばあちゃんの時代から引き継いだ庭があり
いつもの植木屋さんがいつもの時期になったらやってくる。

いまどき 庭の手入れのための出費って・・・
と思うところもあるのだが
『 手入れしないと いい加減な家人に見えて空き巣に狙われる・・・ 』
とも聞くし・・・仕方ない。

今年もその時期がやって来た。
今年はある事情があり、大きな木を2本切ってもらわなければならない。

例年を遥かに上回る仕事量になる。

職人さんの時間割はきっちりしていて、
朝8時に入り 10時にお茶、12時にお昼ご飯、15時にお茶、17時に終了。
おおよそ2時間おきの休憩。
けっこう休みがあるので
今日はどれだけ時間がかかってしまうのかと心配になった。
明日に延長・・・?そ、それは予算が・・・と実にセコイことを考えていると。。。。

お昼が来た。
3時♪チン♪ 
秒針までピッタリですか!
とツッコミたくなるくらいのタイミングで
親方が スパッ と鋏を置いて、午後の休憩に入った。

『 明らかに 仕事 おしてますけど!!!!!!』 と 私。

親方、さらに、夢中に仕事を続けている弟子に一喝!
「 おい!休む時はちゃんと休め!バカヤロ――!」 」

観察していると・・・

親方・・・
悠然と・・・
青い空を見上げながら・・・
ゆーっくりと 豆大福をほお張り・・・
まさに 味わう感じでお茶を口に含み・・・

談笑する内容は 全く仕事とは関わりのない話。

心中 私『 いやいや はやく仕事しようよ・・・ 』 とプチ イラッときていると・・・、

親方 最後のお茶をグイッと飲み干し
ひとつ膝をパン!と叩いて
小さく「よしっ。」と言って立ち上がった。

それからの 後半の追い上げは半端なかった。

そして・・・お見事。17時までに仕事 完了。
木の葉1枚残さず ピシッと掃除も完璧!!

道具も全部片付けて、植木チーム率いて親方挨拶。
「おわりやした。(・・・と 聞こえた(*^_^*)) 」

お。。男前っ!!

朝 私が「今日は、木 2本追加ですが・・」とリクエストした時
眉毛で「承知した」サインを送って来た親方を
最後まで信じれば良かった・・・ m(__)m 

その後、業種は違うが 同じ「職人」と言われる人と話す機会があった。

どうやら人間の集中力は2時間が限度らしい。
がんばりゃいいものでもないらしい。

2時間を超えると、集中していると思っていても
何処かに‘ゆるみ,が出てしまい
ミスが起きやすくなる。
そのミスが命取りになることも・・・。

さらに その「事」から離れることにより
全体のバランスが見えてくる。
客観にかえることにより 見えなかったミスも自分で見つけて修正できる。

加えて職人は、チームワークが大事。
職人同士のバイオリズムを合わせて、
最終 全体で目的に向かって一気に走る。
波が揃っているのが良いチーム。
だから 親方の号令は文句なしの絶対だ。

次の仕事の為に ひとやすみ
次の集中力を蓄電する為に ひとやすみ

「 職人の世界の長い歴史の中で引き継がれて来た
計算された休みなんだよ。 
それが 伝統だよ。 」

苦手なもの


「 機械ものは苦手 ~」
と言って、機械っぽい物は全て主人に押しつけてきた。

ところが必要に迫られ
ノートパソコンを買うことになった。

取り扱いがわからず
早速サポートセンターの人を頼ることになった。
説明される用語が「???」わからない。
しばし、互いに無言。
手に負えない状態になった。

しかしそれからも、めげずに
不可解な説明書を読みまくり
サポートセンターに迷惑を掛けまくり
なんとか仕事らしきものが出来るようになってきた。

『あきらめずに、やればできるじゃん。」
調子に乗って、長い間壊れたままになっていた
ミシンを引っ張りだした。

パソコンの時と同様、
便利なサポートセンターに電話をしてみる。

一日に何度も同じことを聞かれて面倒くさいだろうに
感じのいい明るい声で対応してくれる
ありがたい方たちである。
これも、私には出来ない技である。

トラブルの状況を説明すると
「内釜のお掃除はされましたか? 」

「 えっ?? なぬっ?」
「掃除。。。ですか。」

言われる通り、内釜の中のネジを開けると
「 あらーー!!!!」埃がギュウギュウにつまっていた。

「基本的な掃除の問題かい!!」
自分でツッコんだ。

ごめんね!ごめんね!!
長い間のほったらかし。

苦手苦手と言って
ちゃんと見てもいなかったんだ。

絡み付く綿埃をきれいに取り出すと、
ミシンは快音をたてて動き始めた。

向き合おうともしなかった。
ちょっと見ただけでこんなに簡単に直るのにね…

苦手なもの
苦手な人
結構沢山あるけれど

ちゃんと向き合ったら
苦手じゃなくなるかもしれないな。


ずいぶんと前の話
息子がまだ小学生の頃
マンションの防火扉に指をはさみ
左薬指の先が、1/3を残して取れかかったことがあった。

すぐに病院に駆け込んで診断をしてもらうと、
幸い、筋は傷ついていないとのこと。
そこで、切れた所を縫うのではなく
なんと、指にラップを巻いて自然の力で再生させる事になった。
それで本当に大丈夫なのだろうか と思ったが
お医者様の言う事だから・・と信じて
祈るような思いで帰宅した。

野球をやっていた彼は、その時
もう、野球が出来ないかもしれない・・と絶望的な気分になったらしい。
私は、なんでもっと気を付けてやらなかったんだろう・・・
あんなところに連れていかなければよかった・・・
母親なのに どうしよう こんなことにしてしまって・・・
と とりとめもなく落ち込んだ。
と同時に、もしこのまま上手く指が繋がらなかったら・・・
神様 お願いです、自分が代わりたい と本気で願った。

親子で落ち込む中 消毒に通う日々が続いた。
2人とも この先どうなるか お互い話題にしない。
痛すぎて 恐ろしくて 話題にできない。

そうしていると・・・
ある時お医者様から
「 このままだと いけるかもしれませんね・・・。 」の 一言が・・・。
息子の顔が、ぱぁーっと明るくなったのを見て お医者様があわてて
「 いや、油断はできません。最終的には、動かしてみないとわかりませんから。」
と 低い声で 過度な期待をさせないよう言葉を足した。

その日、家に帰ると
息子がしみじみ言った。
未だラップが巻かれて3倍に膨らんでいる薬指を しげしげと見つめながら。
「 でも・・・良かったよ・・・オレの指・・・あるんだもん。」
「 ・・・だね。」
「 あるだけで ありがたいよ。」
「 ・・・だね。」
3年生のやんちゃ坊主から ありがたい という言葉が出て来た。
本当にその通りだった。
私も 同じ気持ちだった。

その後、順調に回復。
お医者様も驚くくらいのスピードで。

それになんと、1ヶ月後に開催された秋の大会にも
無事試合に参加することが出来た。

ラップの中で、指が再生したのだ。

心から安堵した。
ありがたい。

そして時が過ぎ、
いつの日かそんな事件もあったかな・・・
と記憶が遠のく頃・・・。

実家に行き、近くのお寺の前を通り過ぎようとした時
ふと、お寺の掲示板が目に入った。

「 大難は、中難に
  中難は、小難に
  小難は、無難に 」

グサッ。
刺さった。

忘れてた。
まさに咽喉元過ぎれば・・・
とはこのことだ。
息子のことは
大難だったものが
中難になってやってきたんだ。

ならば
無難になったものは
気がつかずに過ごしている。

私たちは しらないところで
息子のことばを借りるならば「ありがたい」ことになっているに違いない。

その息子は、来春大学生となる。
大学でも大好きな野球を続ける予定だ。